溶接の3つの大別
溶接方法は大別すると下記の三種類の物があります。
□ 圧接法
加圧溶接とも呼び、接合する材料の接合部へ機械的圧力を加えて行う溶接方法を指します。
□ 融接法
溶融溶接とも呼ばれ、たとえば被覆(ひふく)アーク溶接のように、二つの母材を融点以上の温度に加熱して液状にし、混ぜ合わせた後に冷却して固める溶接方法を指します。
□ ろう接法
ろう溶接とも呼ばれ、母材を溶融する事は無く、母材よりも低い融点を持った金属の溶加材(例えば半田や銀ロウ)を溶融させ接合させるて、接合面に毛細管効果を利用して流し込みます。みじかなところで言うと、はんだ付け等があげられます。
圧接法のおもな例
□ 抵抗溶接
電気抵抗による発熱を利用し、材料を瞬間的に溶融させると同時に強い圧力を負荷する事で接合します。代表的な方法としてはスポット溶接、プロジェクション溶接、シーム溶接、フラッシュパット溶接などがあります。
□ ガス溶接
燃焼ガスを用いて、材料を溶融させ接合する方法です。一般的にアセチレンガスと酸素を使います。特徴としては
①溶接箇所が見やすく、作業しやすい為、溶接不良が少ない。
②溶接速度が遅い。
③燃焼に使用するアセチレンガスには取り扱い免許が必要
などが挙げられます。
免許が必要な事や溶接速度が遅いことから、あまり効率の良い溶接方法では無いと言われています。
融接法のおもな例
□ アーク溶接
電気アークの熱によって材料を溶かして溶接を行う方法。最も広く行われている一般的な溶接法。アーク溶接は溶接部の大気元素との反応による、特性劣化を防ぐ手段として、各種の不活性(イナート)ガス雰囲気中で溶接する方法があり、代表的なものに以下があります。
- TIG溶接(タングステン・イナート・ガスアーク溶接)
アルゴン、ヘリウムガスをイナートガスとして、殆ど全ての工業材料の溶接に用いられます。
「板金溶接・製缶加工.COM」を運営するナウ産業が得意とする溶接方法の1つです。
< TIG溶接の主な用途 >
①炭素鋼の高品質溶接のほか、高温で活性を示すアルミニウム、銅、チタンなどの非鉄金属、ステンレス鋼の溶接で用いられる。ただし、後述のミグ溶接ほど高能率を求められない短い溶接線や薄板の溶接で使用される
②裏波溶接(たとえば、突合せ溶接の初層溶接を行う際、母材の裏側まで溶かし込んでビードを形成すること)に適しているため、管の突合せ溶接における最初の層の溶接に使用される。
< TIG溶接の特徴 >
①電極が消耗しないので、アークが安定しており、美しいビードが形成できる。
②アークと溶接都が不活性ガスによっておおわれ、大気が完全に遮断されているため、非常にすぐれた品質の溶接部が得られる。
③スパッタやスラグがなく、有害なヒュームもほとんど発生しない。
④MAG溶接、MIG溶接に比べて、溶接の能率が低い。
⑤アルゴンガスや、タングステン電極が高価である。
⑥風の影響を受ける屋外作業には向かない。 - MIG溶接(メタル・イナート・ガスアーク溶接)
アルゴン、ヘリウムガスをイナートガスとして、アルミ、銅、ステンレス、チタンなどの溶接に用いられる。< MIG溶接の主な用途 >
①TIG溶接と同様の材質に対応可能
②TIG溶接よりも高い能率を要求される場所の溶接< MIG溶接の特徴 >
①アークが安定でスパッタも少なく、ビード外観も良好
②ワイヤの溶融速度が大きく溶け込みが深く高能率
③不活性ガスシールドで溶接金属への不純物混入が極めて少なく、高品質な溶接結果が得られる。
- MAG溶接法(CO2溶接法を含む。)
MAG溶接は金属製(M)の溶接ワイヤを使用し、被覆剤から発生するシールドガスの代わりに炭酸ガス、または、アルゴンガスにある割合の炭酸ガスもしくは酸素を混合した酸化性(A)のガス(G)を用いて、 これでワイヤ先端と母材との間に発生させたアークや溶けた金属を周辺の空気中の酸素や窒素の悪影響からガードしながら行う溶接法です。鋼のアーク溶接工法の中で最も多く使用されており、日本国内にある溶接物の内、おおよそ5割~7割程度が本溶接法による溶接であると言われています。
特徴としては、鉄鋼の溶接方法として歴史が長く、小物(板厚0.8mm程度)から大物(板圧300mm程度)まで幅広い材料に対して溶接が可能となっています。
一般的な溶接方法として浸透している事から、溶接技術者も多く、設備を持っている工場も多い為、設計者としても利用しやすい溶接方法と言えます。